実際のメンタルヘルス対策 管理監督者による職場メンタルヘルスケアのポイント

 

日常的に労働者と最も接するのは、現場の管理監督者(≒多くは上司)です。

 

 

日常業務の中で、部下の心身の不調に気づき把握することが、メンタルヘルスケアの中で重要な位置を占めています。

 

 

では実際に、何に注目すれば、気づくことができるのでしょうか?

 

 

ポイントは、「ズレ」です。

 

 

「職場の平均的な姿からのズレ」

 

「本人の通常の行動様式からのズレ」

 

いつもと違う様子」という感覚です。

 

 

具体的には、

 

最近遅刻が多い、仕事の能率が低下した、ミスが目立つ、顔色がよくない、服装が乱れてきた・・・などです。

 

 

このような時は、本人から話を聞いた上で産業保健スタッフに相談するようにすすめたり、本人が相談に行きたがらない場合には、管理監督者自らが産業保健スタッフに相談することが大切です。

 

 

面談に当たっては、最近遅刻が多い、仕事の能率が低下した、ミスが目立つ、顔色がよくない、服装が乱れてきた・・・などを指摘するのではなく、

 

「最近様子が以前と違うので、心配している。」

 

という気持ちを伝えることから始めましょう。

 

 

アドバイスをするよりも、まずは部下の気持ちを十分に聴くことが大切です。

 

そして、必要に応じて産業保健スタッフや産業医へ相談を促しましょう


産業医と最近の脳・心臓疾患及び精神障害等の労災補償状況について

 

最近の脳・心臓疾患及び精神障害等の労災補償状況について

 

2001年を100%とすると、脳・心臓疾患及び精神障害等の労災補償状況は、請求件数(左図)、実際の認定件数(右図)ともに増加しています。

 

最近の労災件数 図

 

 

 

 

 

特に、精神疾患(メンタルヘルス関係)での増加が著明です。

 

 

 

 

脳・心臓疾患及び精神障害等の労災補償状況の内わけについて

  

実際の労災補償としては、生活習慣病に関するものが、メンタルヘルス等の精神障害関連のものの倍以上あります。

 

 

 

気になる労災caseとしては、

 

発症から5年後の請求で、時効後に労災が認定されたcaseもあるということ。

 

退職後の自殺を労災として認定したcaseもあるということ。

 

 

最近のニュースとしては、

 

トヨタ従業員の自殺が過労死として認定された判決。通常業務後の「サークル活動」が労働時間か否かが焦点になりました。

 

 マクドナルド店長の残業時間の判決。管理職、裁量労働制、サービス残業についてが焦点になりました。

 


産業医と近年の労災情報 ~労災件数について~

 

ここでは、産業医の関係する企業のリスクマネジメントとして、労災、過労死、過重労働対策についてお話します。

 

 

最近の労働行政の取組みは厳しくなってきています。

 

下記法律から、最近の監督署の取締り強化・是正勧告急増の背景が見えてきませんか?

 

 

 199610

   「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」を策定

 

 19999

   「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針について」

 

 20014

   「労働時間の適正な把握の為に使用者が講ずべき措置に関する基準」

 

 200112 

   「脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準」

 

 20022

    「過重労働による健康障害防止の為の総合対策」

 

 20035

   「賃金不払い残業総合対策要領」「サービス残業解消対策指針」

 

 20063

    「過重労働による健康障害防止のための総合対策について」


産業医と過労自殺、脳・心疾患の労災認定

産業医の気になるニュースです。2008年5月の発表をまとめます。

過労自殺81人(前年度比22.7%増)で過去最多、2年間で倍増。

「脳、心疾患」の認定者392人も前年度比約10%増え過去最多。

 

仕事上のストレスが原因でうつ病などの精神疾患になり2007年度に労災認定を受けた人が268人(前年度比30.7%増加)と前年に続き過去最多を更新したことが厚生労働省のまとめで分かった。過労自殺(未遂を含む)も81人(前年度比22.7%増)で過去最多となり、2年間で倍増した。

 

同省によると、07年度にうつ病などの精神疾患で労災請求した人は前年度比162%増の952人、認定は同307%増の268人で、ともに4年前の2倍以上となり、過去最多だった。過労によるうつ病の労災請求件数は03年度の約2倍の952人(前年度比16.2%増)に増えた。

 

業種別では製造業(59人)がトップで、卸売・小売業(41人)や建設業(33人)、医療福祉業(26人)などが目立った。職種は▽専門・技術職75人▽生産工程・労務作業者60人▽事務職53人――。製造関連が前年度比で2倍近く増加しており、好気を反映し生産現場での過重労働の広がりがあるとみられる。

 

268人のうち自殺(未遂含む)で労災認定を受けた人は81人(未遂3人)。4022人、3021人で、働き盛りの年代が過半数を占めた。

 

過労自殺と認定された81人のうち80人は男性で、年代別では40代が22人、30代が21人、50代19人、20代15人。うつ病など精神疾患全体の認定は30代100人、20代66人、40代61人、50代31人。20、30代で6割を超え若年労働者に心の病が広がる状況を示した。

 

同省は今回、精神疾患で労災認定された人の時間外労働時間を初めて調査。81人のうち、1カ月の平均は100時間以上120時間未満が20人、80100時間が11人などだったが、40時間未満も12人おり、労働時間が比較的短くても過労自殺の危険があることが裏付けられた。

 

 

脳出血や心筋梗塞(こうそく)などを発症した「脳、心疾患」の認定者392人(うち死亡142人)も前年度比約10%増え過去最多。請求件数は931人で前年度比0.7%減少した。残業時間は月80~100時間未満が135人、100~120時間未満が91人。160時間以上も35人に上った。

 


産業医も恐れる労働基準監督署の罰則

 

いきなりですが、

 

社員が労働基準監督署に駆け込む=労働基準監督署の調査になると思って下さい。

 

 

その場合、労働基準監督署はいきなりきます。

 

 

 

そして、労働基準監督署の罰則には3種類あります。

 

 

改善指導票(指摘)

 

監督官が事業所調査・立入検査において、労働法令違反には該当しない改善した方が良い、と指摘するものです。

 

または、後々労働法令違反につながる可能性が有る事項に交付されます。

 

 

是正勧告書(イエローカード)

 

事業所調査・立入検査において、労働法令違反に該当している事項に対する行政指導です。

 

行政処分ではありませんので、是正勧告に従わないことだけで行政刑罰や取締りは出来ませんが、

 

その違反状態を放置すると、その労働法令違反を理由に処罰又は送検される可能性があります。

 

 

命令書(レッドカード)

 

施設や設備に安全対策上の不備が有り、労働者に急迫した危険が有る、と認められる場合に交付される「使用停止等命令書」などを指します。

 

これは、労働基準法や労働安全衛生法などの監督権行使規定に基づき交付されるもので、その命令に従わないことのみで処罰されます。

 

 

 

 

実際の処罰は、事業主に対して50万円以下の罰金と意外と(?)割安です。

 

だからといって、放置すると、企業の社会的信用の損失となります。

 

 

また、実際に民事訴訟があったときに不利になることは言うまでもなく、

 

結果として、(賠償費用等で)高くつくことが多いです。

 


産業医と法令遵守 コンプライアンス (Compliance)

 

東京労働局からの発表によると、従業員が1年間で労働基準監督署に駆け込む件数は、

 

 2006年は5,363件、

 

 2007年は5,819件でした。  8.5%の増加です。

 

 

 

その内容で最も多いのは賃金の不払で、

 

 2006年は4,210件、

 

 2007年は4,975件でした。  18%の増加です。

 

 この多くは「サービス残業に対する残業代の不払」と考えられます。

 

 

 

駆け込み件数が増えているということは、

 

 ・  従業員と会社とのトラブルが増加している。

 

 ・  従業員がいろいろと知識を持つようになってきた。

 

 ・  従業員が泣き寝入りしなくなってきた。

 

 ということとが考えられます。

 

 

 

多くの従業員が「サービス残業」については、マスコミ等で報道されているため、知っています。

 

 

ネットで調べれば、その法律に関しての情報はたくさんあります。

 

 

少しその気になれば、現在の自分の労働環境が違法か否かを知ることができるものと考えます。

 

 

昔ほど人々が終身雇用にこだわらなくなった現在、その会社に固執する必要は薄れ、泣き寝入りよりは労働基準監督署に駆け込みを選択する従業員が増えているものと思います。

 

 

単なる「サービス残業に対する残業代の不払」であれば、その支払により解決することも可能です。

 

しかし、サービス残業を含めての残業時間が従業員の負担となり、その従業員の健康に何かあったとしたら、それだけでは済みません。

 

 

近年、厚生省は、2002年に「過労死」の新しい認定基準を全国の労働基準監督署に通達し、残業時間と脳・心臓疾患との因果関係についての見解を示しています。

 

 

 

産業医の立場からとしても、

 

会社は従業員の健康状態と残業問題を把握する必要があるといえます。

 


産業医も気にする厚生労働省が考える新しい過労死認定基準

 

2006年、厚生労働省は「過労死」の新しい認定基準を全国の労働基準監督署に通達しました。

 

 

その内容は、

 

     従業員の疲労の蓄積は、時間労働45時間を目安に発症する。

 

 

     従業員の労働の過重性を判断する評価期間は、

 

 以前は、「発症直前から1週間以内の過重な業務」でしたが、

 

 新基準では「発症6ヶ月間の就労状態を考慮」に変更されました。

 

 

     脳・心臓疾患の発症と時間外労働の関係を示しました。

 

  残業時間が月100時間、または2-6ヶ月平均で80時間をこえると、健康障害のリスクが高まるとしました。

 

新しい過労死認定基準

 

だからこそ、

 

 

会社は従業員の健康状態だけでなく残業問題を把握する必要があります。

 

 

 

労働時間以外労災認定にかかわる要因としては、以下があげられます。

 

1.仕事の質・量の変化

 

2.身分の変化 

 

3.役割・地位等の変化

 

4.対人関係のトラブル

 

5.対人関係の変化

 

6.健康診断・健康配慮

 

 

気がつきましたか?

 

いずれも、メンタルストレス、精神障害と関係するものばかりです。

 


産業医からのお願い・・・「健診をうけましょう!」

 

産業医を選任している企業担当者の方々、および、従業員の方々に、産業医からのお願いです。

 

 

従業員の健康診断の受診を徹底してください。

 

受診率90%以上が目標です。

 

 

企業は、社員に健康診断を受診させる義務があり、

 

社員は、企業に労働法規で定められた健診結果項目を提出する義務があります。

(労働安全衛生法第66条の第1項)

 

 

ちなみに、

 

年1回の定期健康診断のほかに、特殊健康診断の実施(労働安全衛生法第66条の第2・3項)、深夜業務従事者健診、海外派遣労働者健診、結核健康診断、給食従業員の検便などが定められています。

 

他に、VDT健診、騒音健診、腰痛健診等、計30の業務については、行政指導による健康診断が指導勧奨となっています。


産業医の定期健康診断・事後処置への関与

 

2002年の厚生労働省「労働者健康状況調査」によると;

 

定期健康診断を実施した事業所において、担当者がいる事業所の割合を担当者ごとにみると、

 

 福利厚生・人事労務等担当者が77.8%で最も高く、

 

 次いで衛生管理者又は衛生推進者等が49.1%、

 

 産業医が44.4%、

 

 保健師又は看護師が30.5%        となっています。

 

 

また、産業医を選任している事業所における定期健康診断への関わり方については

 

規模が大きいほど産業医の関与の割合が高い傾向にあり、

 

 「5,000人以上」規模の事業所においては、産業医の100%が関与していました。

 

 一方、「10~29人」規模の事業所では7割に満たないようです。

 

 

産業医の担当内容については、「健康診断結果の事後措置の相談」が最も高くなっています


産業医の健診後の事後措置  「健診は、受ければ終わりではありません」

 

個人にとって、健診は、受ければ終わりではありません

 

その結果に基づき、自分の健康を意識することのきっかけにすぎません。

 

健診後、結果後のactionが大切です。

 

 

 

一方、企業においても、健診は、受ければ終わりではありません

 

健診結果は、労働者へ通知してください。

 

健診は、事後措置が行われることに意義があります。

 

また、労働基準監督署へ報告書の提出も忘れずに。

 

 

 

労働安全衛生法においては、一般健康診断の結果

 

 特に健康の保持に努める必要があると医師等が認める労働者には、

 

 医師又は保健師による保健指導の努力義務が企業には課せられています。

保健指導の実施:労働安全衛生法66条の7

 

 

産業医は、健診結果により、

 

 通常の勤務でよい

 

 勤務を制限する必要がある、

 

 勤務を休む必要がある(休業)の判断を行います。

(医師による意見聴取:労働安全衛生法66条の4

 

 

勤務の制限・休業をする必要がある場合、

 

 産業医はその労働者からの意見聴取を行い、

 

 労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮などを行うほか、管理監督者へ説明を行います。

 

また、医師等の意見を衛生委員会等へ報告します。

(就業上の措置の決定:労働安全衛生法66条の5