実際の過重労働対策面談の詳細

 

時間外・休日労働時間が1ヵ月当たり100時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められる労働者が申し出た場合には、事業者はその労働者に対し医師による面接指導を行うことが義務付けられています。

 

この面接を、過重労働面談といいます。

 

実施しなければ法律違反です。

 

 

この時、産業医は主に2点について注意しながら面談を行います。

 

 

まず、健康障害がないか?

 

  直近の健診結果も併用します。

 

 

次に、うつ病の気配はないか

 

  疲労やストレス調査票などを用います。

 

 

事業者はその後、面談を実施した医師からの意見聴取を行い、結果の記録を作成し、これを5年間保存することになっています。

 

そして、場合によっては、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少などの事後措置、つまり労働条件、労働環境の改善を実施する義務があります。

 

 

ちなみに、時間外・休日労働時間が1月当たり80-99時間で、疲労の蓄積が認められる労働者が申し出た場合には、面接指導を実施するように努力する義務があります。

 

つまり厳密には、実施しなくても、法律違反にはなりません。

 

 

ここらへんをどのように対処するのかは、会社によりわかれます。

 

会社のスタンスの違いです。

 

 

自分の会社ではどうなっているのか、どうしたいのか、どうするべきか。

 

あなたの社内でご検討下さい。

産業医も気になるメンタルヘルスへの対策の背景

 

近年、企業内産業保健サービスにおいて重視すべき課題としてメンタルヘルス対策があります。

 

 

2006年の「メンタルヘルスの取り組み」に関する企業アンケートによると、

 

 

  最近3年間における「心の病」は6割以上の企業が「増加傾向」と回答し、過去2回の結果と比較すると、一貫して増加しています。

 

 

心の病が増加傾向と答えた企業は?

 

     2002年:48.9%、2004年:58.2%、2006年:61.5%と増加傾向にあります。

 

 

メンタルヘルスに関する対策に力を入れる企業は?

 

     2002年:33.3%、2004年:46.3%、2006年:59.2%と、メンタルヘルスに関する対策に力を入れる企業も倍近くに増えています。

 

 

 

さらに、メンタルヘルス対策について、約9割の労働組合が必要性を肯定していることを示したものもあります。(2005年、連合「第5回安全衛生に関する調査」)。

 

 

最近のデータでは、2007年度に労働相談情報センターに寄せられたメンタルヘルス(心の健康)に関する相談数は、5946件で、2006年度から105.7%増し、ほぼ倍増となっています。

 

中でも、「職場の嫌がらせ」が2割増加、また、英会話学校等で働く「外国人関連の相談」も2割増加となっています。

 

 

このようなことから、個々の企業、事業場で着実にメンタルヘルス対策が実施されることが求められています。

 

 

また、メンタルヘルス不調の労働者が休業から復帰し、又は継続して働き続けられるようにするといった再チャレンジを支援する仕組みについても早急に構築する必要があります。

 

 

各社がそれぞれの会社に合わせた、「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援プラン」を作成することは、その労働者のみならず会社および人事に関与する人にとって、とても有意義であると思います。

 

 

今後とも、こうした対策の実施状況を踏まえて、より効果のあるメンタルヘルス対策について検討していくことが必要です。

 

 

 

(参考)最近のメンタルヘルスに関する労働行政の取組み

 

19999  「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針について」

 

20008月 「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」

 

20014  「労働時間の適正な把握の為に使用者が講ずべき措置に関する基準」

 

20022  「過重労働による健康障害防止の為の総合対策」

 

200410 「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」

 

20063   「過重労働による健康障害防止のための総合対策について」

 

  

実際のメンタルヘルス対策 「4つのケア」を整えましょう。

 

実際のメンタルヘルス対策として、「4つのケア」を整えましょう。

 

1.       労働者個人によるセルフケア

 

2.       管理監督者による、ラインによるケア

 

3.       事業場産業保健スタッフ等によるケア

 

4.       事業産業保健スタッフ(事業外業者)によるケア

 

 

具体的には、

 

 

1.   労働者個人によるセルフケア

 

         労働者自身が、自ら自らの心の健康のために行う対策です。

 

         その内容は、ストレスへの気づき、ストレスへの対処自発的な相談などです。

 

         実践方法としては、知識の普及や周知のための社内広報(紙・HP)、健康保険組合の雑誌、講習会などがあります。

 

 

2.   管理監督者によるライン(職場)によるケア

 

         日常的に労働者と接する現場の管理監督者が行うケアです。

 

         その内容は、心身の不調をきたしている部下の把握と相談対応、職場復帰支援などです。

 

         メンタルヘルスケアの中で、重要な位置を占めています。

 

 

3.   事業場産業保健スタッフ等によるケア

 

         産業医、衛生管理者、衛生委員会なども含む事業者による、会社としてのケア(への取り組み)です。

 

         その内容は、近い問題に対処可能な具体的な計画、経営方針の一部としての中期的計画・予算化などです。

 

         最も重要なことは、事業者による明確な意思の表明=企業としてのコミットメントです。

 

 

4.   事業産業保健スタッフ(事業外業者)によるケア

 

         事業内で足りない部分に関しては、事業外資源の活用などについても決めておきましょう。

 

         その内容は、EAP機関などのアウトソーシングや場合により医療機関です。

 

         社内で対応できる範囲とアウトソーシングを使う範囲、関係者のプライバシーの問題などの周知が必要です。

 

 

いろいろあって、大変ですが、まずは、必要な時に必要なことができる社内体制を作りましょう。

 

 

あなたの会社の人事部、衛生委員会などで、産業医の先生と相談して下さい。