産業医も気にする労働者の心の健康(メンタルヘルス)③:従業員(労働者)の仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレス

近年、日本の職場環境は激変しています。

職場のモザイク化です。

パートや派遣、契約社員は、従業員の1/3。

外国人労働者は75万人と、過去10年で倍増しています。

企業のMAも進み、正社員であっても、ひとつの枠にとらわれた考え方では、個人や集団の間で生じる対立(conflict)には対応できません。

 

そのような中、自分の仕事や職業生活に関して、

強い不安、悩み、ストレス(以下「仕事でのストレス」)が「ある」とする労働者の割合は58.0%[前回61.5%]となっています。

 

 

「仕事でのストレス」がある労働者が挙げた具体的なストレスの内容としては、

1.         「職場の人間関係の問題」(38.4%)、が高く、

2.         「仕事の質の問題」(34.8%)、

3.         「仕事の量の問題」(30.6%)の順となっています。

 

よく考えてみると、実際の労働者で、

「職場の人間関係の問題」が「仕事でのストレス」、

と答えているのは、22.3%ということになります。

約5人にひとり・・・、これが、多いのか少ないかのご判断はあなたにお任せします。

 

 

男女別にみると、

  • 「職場の人間関係の問題」は
  •   男性30.4% vs. 女性50.5%と、
  •   女性が男性より高く、
  • 「会社の将来性の問題」は、 
  •   男性29.1% vs. 女性12.9%と、
  •   男性が女性より高く、
  • 「昇進、昇給の問題」は、
  •   男性24.9% vs. 女性15.6%と、
  •   男性が女性より高くなっています。

 

女性は職場の人間関係、男性はそれよりも会社や自分の将来を心配することが多いようです。

 

 

就業形態別にみると、

一般社員は、

ü         「職場の人間関係の問題」(37.7%)、

ü         「仕事の質の問題」(36.7%)、

ü         「仕事の量の問題」(32.0%)が高く、

 

契約社員は、

ü         「雇用の安定性の問題」(36.2%)、

ü         「職場の人間関係の問題」(34.4%)、

 

パートタイム労働者は、

ü         「職場の人間関係の問題」(45.8%)が高くなっています。

 

仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレス図4

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以上、20081010に厚生労働省より発表された「平成19年 労働者健康状況調査」を、産業医.com的に紹介させて頂きました。(詳しくはこのリンク先の報道発表資料でご覧ください。)


産業医も納得。事業所の喫煙状況及び喫煙対策

喫煙対策に取り組んでいる事業所の割合は75.5%[前回59.1%]となっており、前回に比べて16.4ポイント上昇しています。

 

事業所規模別にみると、10~29人規模の事業所でも71.9%の事業所で取り組まれていますが、規模の大きい事業所ほどその割合が高く、100人以上のすべての規模で9割を超えています。

 

産業別にみると、

1.         「電気・ガス・熱供給・水道業」(97.2%)、が高く

2.         「金融・保険業」(96.3%)、

3.         「教育,学習支援業」(91.0%)、

4.         「複合サービス事業」(90.8%)、 の順となっています。

 

喫煙対策の取組内容としては、

1.         「喫煙コーナーを設け、それ以外は禁煙にしている」(50.2%)が最も高く、

2.         「喫煙室を設け、それ以外は禁煙にしている」(37.0%)、

3.         「会議、研修等の場所を禁煙にしている」(32.5%)の順となっています。

 

 

ちなみに、

「事業所全体を禁煙にしている」は24.4%、となっています。

 

以上、20081010に厚生労働省より発表された「平成19年 労働者健康状況調査」を、産業医.com的に紹介させて頂きました。(詳しくはこのリンク先の報道発表資料でご覧ください。)

 


産業医も納得。職場の喫煙と受動喫煙の状況

職場で「他の人のたばこの煙を吸入すること(受動喫煙)がある」とする労働者の割合は、65.0%[前回78.1%]となっており、前回に比べて13.1ポイント減少しています。

 

ü         「ほとんど毎日ある」(32.8%)、

ü         「ときどきある」(32.3%)、とのことです。

 

 

職場での喫煙に関して、

不快に感じること、体調が悪くなることの有無についてみると、「ある」と答えた労働者の割合は、30.7%[前回37.2%]となっており、前回と比べて6.5ポイント減少しています。

 

ü         「よくある」とする労働者の割合は8.3%、

ü         「たまにある」は22.4%、とのことです。

 

 

受動喫煙の有無別労働者割合

職場での喫煙に関しての不快感、体調が悪くなる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以上、20081010に厚生労働省より発表された「平成19年 労働者健康状況調査」を、産業医.com的に紹介させて頂きました。(詳しくはこのリンク先の報道発表資料でご覧ください。)

 

 


産業医も納得。労働者(従業員)が喫煙対策として望むこと

職場における喫煙対策として望むことがある労働者の割合は92.2%[前回90.7%]となっています。

 

労働者(従業員)が、対策として望む内容としては、

1.         「喫煙室又は喫煙コーナーを設け、それ以外を禁煙とすること」(54.1%)、 が最も高く、

2.         「喫煙室又は喫煙コーナーにたばこの煙を排気・除去する機器等を設置すること」(35.3%)、

3.         「事業所全体を禁煙とすること」(24.0%)、 の順となっています。

 

以上、20081010に厚生労働省より発表された「平成19年 労働者健康状況調査」を、産業医.com的に紹介させて頂きました。(詳しくはこのリンク先の報道発表資料でご覧ください。)


産業医も納得。事業所にとって、労働者の健康管理対策として重要な課題とは?

労働者の健康管理対策として、

重要な課題がある事業所の割合は98.4%[前回99.9%]となっています。

 

 

事業所側の具体的な課題としては、

1.         「定期健康診断の完全実施」(69.3%) が最も高く、

2.         「定期健康診断の事後措置」(47.3%)、

3.         「職場環境の整備」(30.2%)

4.         「心の健康に対する対策」(28.9%)

5.         「人間ドックの実施・充実」(27.8%) となっています。

 

 

図3労働者の健康管理対策の重要課題別事業所割合

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以上、20081010に厚生労働省より発表された「平成19年 労働者健康状況調査」を、産業医.com的に紹介させて頂きました。(詳しくはこのリンク先の報道発表資料でご覧ください。)


産業医も納得。労働者(従業員)が、健康管理やストレス解消のために会社に期待すること

 「健康管理やストレス解消のために会社に期待することがある」とする労働者の割合は68.8%[前回65.1%]となっています。

 

そのうち、期待する内容としては、

1.         「がん検診や人間ドックの受診費用の負担の軽減」(41.6%) が最も多く、

2.         「休養施設・スポーツ施設の整備、利用の拡充」(33.4%)、

3.         「健康診断の結果に応じた健康指導の実施」(27.0%)、

4.         「施設整備等の職場環境の改善」(20.5%) の順となっています。

 

年齢が上になるほど、「健康診断の結果に応じた健康指導の実施」が高くなっており、

年齢が下になるほど、「休養施設・スポーツ施設の整備、利用の拡充」が高くなっています。

 

従業員(労働者)の多くは、自らはすでに定期健診を受けており、今以上の充実した内容(がん検診・人間ドック)や、検診後のフォロー体制の充実を望んでいるようです。

若い従業員(労働者)においては、福利厚生施設の充実を望む声が高いのだと思われます。

 

一方企業(事業所)側は、定期健診の受診率(概ね8-9割)の増加やその後のフォロー体制を、第一に考えているようです。

その他、職場環境の整備や心の健康に対する対策など、最近の労働基準監督署・厚生省が重要事項として考えていることをやはりカバーしようと考えているように感じます。

法的・労基的・厚生省的には強くは求められていないがん検診や人間ドックなどは、あくまでオプションであり、従業員(労働者)の希望ほどは・・・という印象です。

 

 

会社に期待することの内容別労働者割合

図5

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以上、20081010に厚生労働省より発表された「平成19年 労働者健康状況調査」を、産業医.com的に紹介させて頂きました。

(詳しくはこのリンク先の報道発表資料でご覧ください。)

 


産業医のコメント 定期健康診断等の結果に基づく健康管理のための事後措置の実施状況

過去1年間に定期健康診断、がん検診又は人間ドックのいずれかを実施した事業所のうち、

異常の所見があった労働者がいる事業所の割合は78.2%であり、

そのうち、何らかの事後措置を行っている事業所の割合は84.5%[前回81.9%]です。

 

 

事業所規模別にみると、

規模が大きくなるほど何らかの事後措置を行っている事業所の割合が高く、

50人以上のすべての規模で9割を超えています。

 

これは、50人以上の規模の事業所は産業医を持つことになっていますので、その産業医が企業訪問時に「健康相談」などをおこなっているものと思われます。

 

事後措置の内容としては、

「再検査・精密検査の指示等の保健指導を行った」(78.7%)が高い割合となっています。

 

 

以上、20081010に厚生労働省より発表された「平成19年 労働者健康状況調査」を、産業医.com的に紹介させて頂きました。(詳しくはこのリンク先の報道発表資料でご覧ください。)

 


産業医のコメント がん検診・人間ドックの受診率及び有所見率

過去1年間にがん検診又は人間ドックを実施した事業所において、

がん検診又は人間ドックを受診した労働者の割合(受診率)は、34.7%となっており、

所見のあった労働者の割合(有所見率)は、29.3%となっています。

 

ここでいう「所見のあった」とは、「要精査」(精密検査・二次検査を受けましょう)となった人のことで、実際に癌が見つかった人の割合ではありませんのでご注意を。 

 がん検診・人間ドック実施の有無別事業所割合

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以上、20081010に厚生労働省より発表された「平成19年 労働者健康状況調査」を、産業医.com的に紹介させて頂きました。(詳しくはこのリンク先の報道発表資料でご覧ください。)


産業医からみた実際のがん検診の内容 大腸・胃・子宮・乳がん検診について

産業医からみた大腸がん検診

 

「大腸がん検診」は、便潜血反応です。

便についている血液を調べる検査です。たいてい2回します。

 

進行した大腸癌があっても7割程度しか陽性とならない(ひっかからない)ところが短所ですが、簡便にできる検査ですね。

 

1回でも血が付いていれば、密検査の大腸内視鏡検査を勧められます。大腸内視鏡検査については、こちらのブログを参照して下さい。

 

無痛で早い大腸内視鏡検査の記録ブログ

 

 

産業医からみた胃がん検診

 

 「胃がん検診」(60.1%)は、バリウム検査が一般的。

バリウム飲んで、台が倒れたり、体をグルグルまわしたりして、レントゲン写真を撮る検査です。

昔からある、一番“検診”のイメージの強い検査ですね。

 

内視鏡検査(胃カメラ)の普及や経鼻内視鏡の出現により、胃のバリウム検査はその意義が問われている(?)と感じます。

 

正直、検査の精度(正確さ)は・・・です。

 

ちなみに、産業医.com管理人は、医師でバリウムを飲んでいる人を知りません。

 

その他、ペプシノゲン検査(採血した血の中のものを調べるだけ)などもあります。

 

いずれも、ひっかかったら胃内視鏡検査へとなりますが、最近は、はじめから胃カメラを選択できる検診コースが増えている印象です。そのときは、内視鏡検査(胃カメラ)を選びましょう!

 

 

産業医からみた子宮がん検診

 

 「子宮がん検診」(57.4%)はいわゆる女性のためのがん検診でもっとも一般的なものです。

女性器入口付近を綿棒のようなもので擦り、それを顕微鏡で調べます。

 

引っかかれば、婦人科受診となります。

 

 

他に、HPV(ヒトパピローマウイルス)を調べることもあります。

 

ヒトパピローマウイルスは子宮頚癌のリスク因子であり、ヒトパピローマウイルスがいる人のほうが、子宮頚癌になる確率が高いことが認められています。

 

もし、ヒトパピローマウイルスが陽性(いる)場合、そのウイルスを退治する治療があり、

そうすることにより子宮頚癌は予防することができます。

 

このヒトパピローマウイルスの退治治療の費用は現時点では保険では認められておらず、自由診療(ようするに自費=高い)です。

しかしながら、癌を予防することができると実証されているこの検査と治療は女性にはお勧めだと思います。

 

 

 

産業医からみた乳がん検診

 「乳がん検診」(55.3%)は、触診だけでなくマンモグラフィーが一般的(?)。

いわゆる女性のためのがん検診で2番目に一般的なものです。

 

触診とは、実際に医師が乳房や腋窩(わきの下)を診察して、何かしこりがないか調べるものです。

実際に「何か」が見つかることもありますが、その精度は施行する医師の技量だけでなく、受ける患者さんの体型等も含めて個人差があります。

 

また、「触診」という行為自体に抵抗がある女性も多く、近年はマンモグラフィーが増えつつあります。

 

特に、公的ながん検診でなく、人間ドックなどの施設では、患者さんのニーズは大切ですので、マンモグラフィーを導入しているところがほとんどだと思います。

 

実際のマンモグラフィーは、「おっぱいのレントゲン写真を撮る」検査です。

 

最近はレントゲン写真もコンピューター処理が進み、精度がかなりいいとのことです。

 

これでひっかかると、精査にまわります。触診のほか、超音波検査、そして「何か」あるようであれば、組織診・細胞診(針をさして細胞を調べる検査)となります。

 

乳がんは女性の5人に1人が一緒のうちに一度かかるともいわれています。女性にはお勧めの検査です。

 


産業医からみたがん検診・人間ドックについて

過去1年間にがん検診又は人間ドックを実施した事業所の割合(実施率)は41.1%[前回41.0%]で、

 

がん検診を実施した事業所の割合は29.3%、

人間ドックを実施した事業所の割合は27.7%、

がん検診と人間ドックの両方を実施した事業所の割合は15.9% でした。

 

事業所規模別にみると、上記のいずれについても、規模が大きくなるほど、実施した事業所の割合が高くなっています。

 

実際のがん検診の種類(複数回答)をみると、

「大腸がん検診」(61.7%)が高く、

「胃がん検診」(60.1%)、

「子宮がん検診」(57.4%)、

「乳がん検診」(55.3%)の順でした。

 

 

がん検診・人間ドック実施の有無別事業所割合

がん検診実施の有無及び種類別事業所割合 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以上、20081010に厚生労働省より発表された「平成19年 労働者健康状況調査」を、産業医.com的に紹介させて頂きました。(詳しくはこのリンク先の報道発表資料でご覧ください。)