産業医から小規模企業へ①-1 一般定期健康診断の必要性とその実施項目

産業医からの質問:

 

 あなたの会社は、年1 回、定期に一般健康診断を実施していますか?

 

 

従業員の安全と健康を守るための「労働安全衛生法」という法律は、経営者に対して、「1年に1回、定期に健康診断を実施」することを義務づけています。

 

これを「一般定期健康診断」といいます。

 

たとえ従業員が1人でも、実施する義務があります(労働安全衛生法66 1 項)。

 

 

一般定期健康診断は、従業員が元気に働くことができるよう、胸部エックス線検査、血圧の測定、肝機能検査などの定められた項目を実施し、その結果を健康管理に生かすためのものです。

 

この一般定期健康診断を実施しない経営者は、処罰されることがあります。

 

 

一般定期健康診断の項目

 

これらの中には年齢、医師の判断により省略可能な項目があるので、産業医または健康診断機関にご相談ください。

 

既往歴及び業務歴の調査、

自覚症状及び他覚症状の有無の検査、

身長・体重・腹囲・視力及び聴力検査、

胸部X線検査及び喀痰検査、

血圧の測定、

貧血検査、

肝機能検査、

血中脂質検査(LDLコレステロール、HDL コレステロール、血清トリグリセライド)、

血糖検査、

尿検査(尿糖検査も必須)、

心電図検査

産業医から小規模企業へ①-2一般定期健康診断の実施方法

一般定期健康診断を実施するための方法について

 

① 近くの診療所、病院などで一般定期健康診断が受診できないか相談してみてください。

 

 できれば、「産業医」の資格を持っている医師がいる診療所などに相談してください。受診が可能な場合は、毎年、定期に全従業員を受診させてください。

 

 

② 近くの診療所などで一般定期健康診断が受診できない場合は、もよりの健康診断機関に連絡を取り、毎年、定期に全従業員を受診させてください。

 

 

「産業医」とは?

会社の従業員の健康管理を産業医学の専門家として実施することのできる資格を持った医師。

労働安全衛生法により、会社の規模に応じて選任基準があり、従業員50 人以上の会社は、産業医を選任する義務があります。

 

「健康診断機関」とは?

国は全国労働衛生団体連合会に委託し、「総合精度管理事業」を実施しており、本事業に参加し、評価が一定レベルに達した健康診断機関が公表されていますので積極的に活用してください。

全国労働衛生団体連合会の連絡先は、巻末の付録を参照してください。

産業医から小規模企業へ②-1 健康診断の結果の通知の必要性

産業医からの質問:

 

 あなたの会社では、健康診断の結果を受診した従業員に通知していますか?

 

 

労働安全衛生法は、経営者に対して、健康診断の結果を受診した従業員すべてに通知することを義務づけています(労働安全衛生法66条の6)。

 

これは、健康診断の結果を本人が知り、自らの健康管理に役立てるためです。この通知を行わない経営者は、処罰されることがあります。

産業医から小規模企業へ②-2 健康診断結果の通知の方法

具体的な通知の方法について

 

①近くの診療所などで健康診断を受診させた場合は、その結果を労働衛生の担当者に渡すようにお願いしてください。

 受け取った結果は、コピーをとった後、コピーを受診した従業員に渡してください。

 

②健康診断機関で健康診断を受診させた場合は、健康診断機関から、本人用と会社の保存用の2つの健康診断結果が送付されてくる場合がありますので、本人用の結果を受診した従業員に渡してください。

産業医から小規模企業へ③-1 健康診断の結果の記録の必要性

産業医からの質問:

 

 あなたの会社では、健康診断の結果を記録して保存していますか?

 

 

労働安全衛生法は、経営者に対して、実施した健康診断の結果を記録して保存することを義務づけています(労働安全衛生法66条の3)。

 

例えば、肝機能などの検査結果の経時的変化を見ながら、メタボリック症侯群(生活習慣病、成人病)の早期発見と予防のための健康管理や適正配置などの就業上の配慮を行うためです。

 

この記録と保存を行わない経営者は、処罰されることがあります。

産業医から小規模企業へ③-2 健康診断結果の記録と保存の方法

具体的な記録と保存の方法について

 

①労働安全衛生法は、健康診断結果を記録するための様式を定めています。

 

 健康診断を近くの診療所などで受診した場合は、医師と相談し、所定の様式で健康診断の結果をもらうようにしてください。健康診断を実施した医師が様式を知らないようでしたら、もよりの地域産業保健センターまたは産業保健推進センターにお問い合わせください。

 

 

② 健康診断機関で受診させた場合は、所定の様式で結果が通知されますので、保存しておいてください。

 

 

③ 健康診断結果の記録と保存に当たっては、従業員の健康管理以外の目的で使用しないなどプライバシーの保護に配慮する必要があります。

 

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「産業保健推進センター(推進センター)」とは?

産業医、産業看護職、衛生推進者などの産業保健関係者への支援を目的に、厚生労働省からの交付金により労働者健康福祉機構が各都道府県の県庁所在地に設置しているもの。

研修の実施、図書・ビデオなどの貸し出し、窓口相談などを実施しています。

 

 

「地域産業保健センター(地域センター)」とは?

従業員50 人未満規模の小規模企業の産業保健を支援するために、厚生労働省からの委託により、郡市区医師会が設置しているもの。

全国に347 カ所あり、健康相談、個別訪問、保健指導などを実施しています。

産業医から小規模企業へ④-1 深夜業などの従事者への健康診断の必要性

産業医からの質問:

 

 あなたの会社には、月4回以上、午後10時から午前5時までの間に働く従業員がいますか?

 

 

労働安全衛生法は、経営者に対して、深夜業(午後10時から午前5 時までの間に働くこと)に従事する従業員や著しく暑熱・寒冷などの環境で働く従業員については、半年に1 回の健康診断を受診させることを義務づけています(労働安全衛生法66 条1項)。

 

これは、深夜業が通常の体内のリズムに反して働くため、身体の調子を崩しやすいなど、より手厚い健康管理が必要なためです。この健康診断を受診させない経営者は、処罰されることがあります。

産業医から小規模企業へ④-2 深夜業などの従事者の健康診断の実施方法

具体的な健康診断の実施方法について

 

①健康診断の項目などは、一般定期健康診断と同一です。

 

 深夜業などに従事している全ての従業員に、必ず半年に1回、健康診断を受診させてください。

 

 深夜業の他に半年に1 回の健康診断が必要な仕事は、著しい暑熱・寒冷・振動・強烈な騒音・重量物取り扱い・坑内・有害物のガス・蒸気・粉じんなどの環境で働く業務です。

 

 

②なお、夜業従事者が年2回の法定健康診断に加えて自発的に健康診断を受診する場合には、費用の一部を助成する制度があります自発的健康診断受診支援助成金)。

 

 詳しくは推進センターにお問い合わせください。

産業医から小規模企業へ⑤-1 有害業務従事者への特殊健康診断の必要性

産業医からの質問:

 

 あなたの会社では、シンナーなどの有害な化学物質を取り扱うなど、有害な業務がありますか?

 

 

労働安全衛生法は、経営者に対して、シンナー・鉛・クロム酸などの有害物を取り扱う従業員を対象とした特殊健康診断を実施することを義務づけています(労働安全衛生法662項)。

 

シンナーなどの有害物は、中毒などの職業病を引き起こすおそれが高く、特殊健康診断を行って、その 結果に基づき健康管理を推進する必要があるためです。

 

この特殊健康診断を実施しない経営者は、処罰されることがあります。

産業医から小規模企業へ⑦-1 パート社員への健康診断の必要性

産業医からの質問:

 

 あなたの会社で、パート社員などの短時間従業員で、常時働いている人がいますか?

 

 

労働安全衛生法は、

 

経営者に対して、

 

パート社員などの短時間しか働かない従業員でも、

 

正規従業員の4分の3以上働く人には、

 

一般定期健康診断を受診させることを義務づけています(労働安全衛生法66条1項)。

 

 

これは、パート社員という名前ではあっても実質的に正規従業員とほとんど変わらない時間働くのであれば、正規従業員と同じレベルの健康管理をする必要があるからです。

 

パート社員に対して、一般定期健康診断を実施しない経営者は、処罰されることがあります。