2011年10月26日19時16分
ノキア日本法人社員の過労死認定=「24時間体制の勤務過重」―大阪地裁
2011年10月26日19時16分
過去1年間にメンタルヘルス上の理由により連続1か月以上休業又は退職した労働者がいる事業所の割合は7.6%となっています。
1000人以上の事業所においては、9割を超えています。
産業医的には、同感です。
そう実感しております。
以上、2008年10月10日に厚生労働省より発表された「平成19年 労働者健康状況調査」を、産業医.com的に紹介させて頂きました。(詳しくはこのリンク先の報道発表資料でご覧ください。)
最近の脳・心臓疾患及び精神障害等の労災補償状況について
2001年を100%とすると、脳・心臓疾患及び精神障害等の労災補償状況は、請求件数(左図)、実際の認定件数(右図)ともに増加しています。
特に、精神疾患(メンタルヘルス関係)での増加が著明です。
脳・心臓疾患及び精神障害等の労災補償状況の内わけについて
実際の労災補償としては、生活習慣病に関するものが、メンタルヘルス等の精神障害関連のものの倍以上あります。
気になる労災caseとしては、
・発症から5年後の請求で、時効後に労災が認定されたcaseもあるということ。
・退職後の自殺を労災として認定したcaseもあるということ。
最近のニュースとしては、
・ トヨタ従業員の自殺が過労死として認定された判決。通常業務後の「サークル活動」が労働時間か否かが焦点になりました。
・ マクドナルド店長の残業時間の判決。管理職、裁量労働制、サービス残業についてが焦点になりました。
ここでは、産業医の関係する企業のリスクマネジメントとして、労災、過労死、過重労働対策についてお話します。
最近の労働行政の取組みは厳しくなってきています。
下記法律から、最近の監督署の取締り強化・是正勧告急増の背景が見えてきませんか?
1996年10月
「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」を策定
1999年9月
「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針について」
2001年4月
「労働時間の適正な把握の為に使用者が講ずべき措置に関する基準」
2001年12月
「脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準」
2002年2月
「過重労働による健康障害防止の為の総合対策」
2003年5月
「賃金不払い残業総合対策要領」「サービス残業解消対策指針」
2006年3月
「過重労働による健康障害防止のための総合対策について」
産業医の気になるニュースです。2008年5月の発表をまとめます。
仕事上のストレスが原因でうつ病などの精神疾患になり2007年度に労災認定を受けた人が268人(前年度比30.7%増加)と前年に続き過去最多を更新したことが厚生労働省のまとめで分かった。過労自殺(未遂を含む)も81人(前年度比22.7%増)で過去最多となり、2年間で倍増した。
同省によると、07年度にうつ病などの精神疾患で労災請求した人は前年度比16.2%増の952人、認定は同30.7%増の268人で、ともに4年前の2倍以上となり、過去最多だった。過労によるうつ病の労災請求件数は03年度の約2倍の952人(前年度比16.2%増)に増えた。
業種別では製造業(59人)がトップで、卸売・小売業(41人)や建設業(33人)、医療福祉業(26人)などが目立った。職種は▽専門・技術職75人▽生産工程・労務作業者60人▽事務職53人――。製造関連が前年度比で2倍近く増加しており、好気を反映し生産現場での過重労働の広がりがあるとみられる。
268人のうち自殺(未遂含む)で労災認定を受けた人は81人(未遂3人)。40代22人、30代21人で、働き盛りの年代が過半数を占めた。
過労自殺と認定された81人のうち80人は男性で、年代別では40代が22人、30代が21人、50代19人、20代15人。うつ病など精神疾患全体の認定は30代100人、20代66人、40代61人、50代31人。20、30代で6割を超え若年労働者に心の病が広がる状況を示した。
同省は今回、精神疾患で労災認定された人の時間外労働時間を初めて調査。81人のうち、1カ月の平均は100時間以上120時間未満が20人、80~100時間が11人などだったが、40時間未満も12人おり、労働時間が比較的短くても過労自殺の危険があることが裏付けられた。
脳出血や心筋梗塞(こうそく)などを発症した「脳、心疾患」の認定者392人(うち死亡142人)も前年度比約10%増え過去最多。請求件数は931人で前年度比0.7%減少した。残業時間は月80~100時間未満が135人、100~120時間未満が91人。160時間以上も35人に上った。
いきなりですが、
社員が労働基準監督署に駆け込む=労働基準監督署の調査になる、と思って下さい。
その場合、労働基準監督署はいきなりきます。
そして、労働基準監督署の罰則には3種類あります。
①改善指導票(指摘)
監督官が事業所調査・立入検査において、労働法令違反には該当しないが改善した方が良い、と指摘するものです。
または、後々労働法令違反につながる可能性が有る事項に交付されます。
②是正勧告書(イエローカード)
事業所調査・立入検査において、労働法令違反に該当している事項に対する行政指導です。
行政処分ではありませんので、是正勧告に従わないことだけで行政刑罰や取締りは出来ませんが、
その違反状態を放置すると、その労働法令違反を理由に処罰又は送検される可能性があります。
③命令書(レッドカード)
施設や設備に安全対策上の不備が有り、労働者に急迫した危険が有る、と認められる場合に交付される「使用停止等命令書」などを指します。
これは、労働基準法や労働安全衛生法などの監督権行使規定に基づき交付されるもので、その命令に従わないことのみで処罰されます。
実際の処罰は、事業主に対して50万円以下の罰金と意外と(?)割安です。
だからといって、放置すると、企業の社会的信用の損失となります。
また、実際に民事訴訟があったときに不利になることは言うまでもなく、
結果として、(賠償費用等で)高くつくことが多いです。
東京労働局からの発表によると、従業員が1年間で労働基準監督署に駆け込む件数は、
2006年は5,363件、
2007年は5,819件でした。 8.5%の増加です。
その内容で最も多いのは賃金の不払で、
2006年は4,210件、
2007年は4,975件でした。 18%の増加です。
この多くは「サービス残業に対する残業代の不払」と考えられます。
駆け込み件数が増えているということは、
・ 従業員と会社とのトラブルが増加している。
・ 従業員がいろいろと知識を持つようになってきた。
・ 従業員が泣き寝入りしなくなってきた。
ということとが考えられます。
多くの従業員が「サービス残業」については、マスコミ等で報道されているため、知っています。
ネットで調べれば、その法律に関しての情報はたくさんあります。
少しその気になれば、現在の自分の労働環境が違法か否かを知ることができるものと考えます。
昔ほど人々が終身雇用にこだわらなくなった現在、その会社に固執する必要は薄れ、泣き寝入りよりは労働基準監督署に駆け込みを選択する従業員が増えているものと思います。
単なる「サービス残業に対する残業代の不払」であれば、その支払により解決することも可能です。
しかし、サービス残業を含めての残業時間が従業員の負担となり、その従業員の健康に何かあったとしたら、それだけでは済みません。
近年、厚生省は、2002年に「過労死」の新しい認定基準を全国の労働基準監督署に通達し、残業時間と脳・心臓疾患との因果関係についての見解を示しています。
産業医の立場からとしても、
会社は従業員の健康状態と残業問題を把握する必要があるといえます。
2006年、厚生労働省は「過労死」の新しい認定基準を全国の労働基準監督署に通達しました。
その内容は、
① 従業員の疲労の蓄積は、時間外労働45時間を目安に発症する。
② 従業員の労働の過重性を判断する評価期間は、
以前は、「発症直前から1週間以内の過重な業務」でしたが、
新基準では「発症前6ヶ月間の就労状態を考慮」に変更されました。
③ 脳・心臓疾患の発症と時間外労働の関係を示しました。
残業時間が月100時間、または2-6ヶ月平均で80時間をこえると、健康障害のリスクが高まるとしました。
だからこそ、
会社は従業員の健康状態だけでなく残業問題を把握する必要があります。
労働時間以外に労災認定にかかわる要因としては、以下があげられます。
1.仕事の質・量の変化
2.身分の変化
3.役割・地位等の変化
4.対人関係のトラブル
5.対人関係の変化
6.健康診断・健康配慮
気がつきましたか?
いずれも、メンタルストレス、精神障害と関係するものばかりです。