近年の労災情報 ~労災件数について~
ここでは、産業医の関係する企業のリスクマネジメントとして、労災、過労死、過重労働対策についてお話します。
心の健康を損なう、いわゆる「精神障害」などで労災が請求された件数は、引き続き高水準で推移していると同時に、決定件数は過去最多となっています。
厚生労働省 平成24年度「脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」
そのようなことを背景に、最近の労働行政の取組みは厳しくなってきています。
下記法律から、最近の監督署の取締り強化・是正勧告急増の背景が見えてきませんか?
1996年10月 「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」を策定
1999年9月 「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針について」
2001年4月 「労働時間の適正な把握の為に使用者が講ずべき措置に関する基準」
2001年12月 「脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準」
2002年2月 「過重労働による健康障害防止の為の総合対策」
2003年5月 「賃金不払い残業総合対策要領」「サービス残業解消対策指針」
2006年3月 「過重労働による健康障害防止のための総合対策について
まずは、最近の脳・心臓疾患及び精神障害等の労災補償状況について。
2001年を100%とすると、脳・心臓疾患及び精神障害等の労災補償状況は、請求件数(左図)、実際の認定件数(右図)ともに増加しています。
特に、精神疾患(メンタルヘルス関係)での増加が著明です。
脳・心臓疾患及び精神障害等の労災補償状況の内わけについて。
実際の労災補償としては、生活習慣病に関するものが、メンタルヘルス等の精神障害関連のものの倍以上あります。
気になる労災caseとしては、
・ 発症から5年後の請求で、時効後に労災が認定されたcaseもあるということ。
・ 退職後の自殺を労災として認定したcaseもあるということ。
最近のニュースとしては、
・ トヨタ従業員の自殺が過労死として認定された判決。通常業務後の「サークル活動」が労働時間か否かが焦点になりました。
・ マクドナルド店長の残業時間の判決。管理職、裁量労働制、サービス残業についてが焦点になりました。