産業医と従業員・管理職・経営者との関わり① 従業員のパフォーマンスのために

 

産業医は、従業員のパフォーマンスのために働きます・・・

 

n       自身の体調を万全にするとともに、安全快適で働きやすい職場環境をめざします・・・

 

 

具体的には、 

  n       ①安全で快適な職場作り

 

  n       ②健康増進(心と体の健康)

 

  n       ③休職・復職・配置転換時の診断と対応

 

  

①快適職場の実現

 

従業員が能力を発揮するためには快適な職場環境を作る必要があります。

 

明るさ、温度、休憩設備などの物理的な問題、業務そのものに関する問題や、上司と部下、同僚との人間関係など、産業医は様々な側面の相談を受けます。

 

 

②健康増進

 

心身ともに健康であることは、就業する上でもっとも基本的な前提条件となります。

 

産業医は健康相談、健康教育など医師としての専門性を発揮し指導や助言を行います。

 

③休職・復職・配置転換時の診断

 

ケガや心疾患、脳疾患、うつ病など様々な健康上の理由で、業務内容や就業時間に何らかの配慮が必要になることがあります。 

 

産業医は本人の状態や希望を聞き、職場の上司、主治医などと協力して調整を行い必要であればアドバイスも行います。


産業医と従業員・管理職・経営者との関わり② 管理職のパフォーマンスのために

 

産業医は、管理職のパフォーマンスのために働きます・・・

 

n       「部署のパフォーマンス」と「管理職自身のパフォーマンス」のために・・・

 

n       快適な職場作り→部署の生産性向上のために・・・

 

n       管理職自身の健康も大切です・・・

 

 

具体的には、

 n       ①安全で快適な職場作り

 

 n   ②自身の健康増進(心と体の健康)

 

 n       ③休職・復職・配置転換時の診断と対応

 

 n       ④部下のメンタルヘルスと健康管理

 

 

①安全で快適な職場作り

 

 最近ではメンタルヘルスの観点からストレスの少ない職場作りの動きが活発になっています。

 

 ストレス環境の改善には業務内容や業務環境の見直しや、上司や同僚とのコミュニケーションの改善といった「職場作り」が必要です。

 

 産業医は社員との面談などを通して問題点の発見や改善提案をします。

 

 

②管理職自身の健康増進

 

生活習慣病は、長い年月を経て動脈硬化を進行させ、心臓発作や脳卒中などの致命的なイベントを起こす恐ろしい病気です。

 

しかしそれ自身は無症状であることが多く仕事が忙しいことを理由に軽視されがちです。

 

産業医は、健康診断結果のチェックや健康相談、正しい知識を伝えるための健康教育などによって職場の健康増進に貢献します。

 

 

③休職者と復職者への対応

 

管理職が最も頭を痛めるのが、休職者と復職者の対応です。

 

特に復職については業務内容や就業時間配置転換など、社内での継続的な支援を行うには理解とエネルギーが必要です。

 

しかし従業員本人と上司、経営陣など関係者の利害が一致せず、調整が難航することも少なくありません。

 

産業医は医学的な配慮を行うだけではなく、従業員本人とそこに関係する者、企業との現実的な妥協点を探ります。

 

 

④部下のメンタルヘルス

 

メンタルヘルスの問題は、職務上のミスや事故、遅刻や欠勤などの現象として現れます。

 

これらの初期症状にいち早く気づき、適切な対応と支援を行うことが管理職に求められています。

 

また、特に管理職(中間管理職)が高リスクを抱えていると自体が問題であることも多いです。

 

産業医による職場巡視や面談、管理職に対するメンタルヘルス講習は、早期発見と適切な対応を促す最良の方法です。


ストレス過労、深刻に 労災申請、身体要因上回る

日経新聞記事より、産業医の気になるニュースです。

ストレス過労、深刻に 労災申請、身体要因上回る

 精神面でのストレスを理由とする過労労災が認められるケースが相次いでいる。

 2007年度には、精神疾患での労災申請が脳や心臓などの身体的疾患での申請を初めて上回った。

 企業の経営効率化で職場の負荷が高まったことが背景とみられるが、専門家は「精神疾患を予防する体制が整っておらず、企業の対策は後手に回っている」と指摘している。

 06年11月に自殺したキヤノンの男性社員(当時37)の遺族側は、労災を沼津労働基準監督署に申請、今年6月に認定された。
 男性は研究職として入社。06年9月以降、月200時間近い残業をするようになり、同年11月に自殺した。


産業医と従業員・管理職・経営者との関わり③ 経営者のパフォーマンスのために

 

経営者と産業医のかかわり

 経営者は従業員の安全や健康について様々な義務を負っており、産業医を配置することもそのうちのひとつです。

 すなわち、産業医の業務は従業員に対する単なるサービスでは無く、経営者の持つ安全配慮義務の実務を肩代わりしているともいえます。

 

 どの企業においても事故や労働災害の発生を最小限にすることが求められています。

そのためには個々の事例に対応するだけではなく、安全面や環境面で職場全体の改善に取り組む必要があります。

 

産業医にはそれを実施する専門知識と行動力が求められますが、双方の時間的・物理的・金銭的諸問題により、充分な対応をできない状況があります。

 

しかし何か問題が発生したとき責任を負うのは経営者自身です。

 

 

従って、具体的に今の体制で、クリアできること、できないことを確認し、不足については別のもので補わなくてはならないのが現状です。

 

「産業医」システムで対応できることもありますし、

 

社外のソース(EAP等)を利用することがbetterなこともあります。

 


産業医を選任している事業所の割合

厚生労働省「労働安全衛生基本調査」によると、

 

産業医を選任している事業所の割合は、事業所規模別の選任状況は2005年で、

 

  全体では75.4%となっています。

 

 1,000人以上規模では99.8%と高いが、

 

 50~99人規模では63.7%と低いです。

 

  

ちなみに、選任義務のない50人未満の事業所では7.9%です。

 

 

(注)ただし、ここで「選任」とは、事業所の産業医として登録した産業医の数であり、実際は名ばかりの産業医(名義貸し産業医)も含むと思われますので、実際の数値ははもっと低いと思います。


過去一年間に産業医が実際に関与した業務別の事業所数割合

実際の産業医の職務は、

 

「健康診断結果に基づく事後措置、再発防止措置の指導」、

 

「健康相談・保健指導等の実施」

 

及び「健康診断の実施に関すること」など、

 

健康診断やそれに関連する職務など健康管理を中心として活動が行われているようです。

 

 

他方で作業環境管理などその他の業務へ産業医が関与していると答えた事業所の割合は比較的低くなっています。

 


従業員の定期健診受診率は9割以上が常識です!

産業医の気になるニュース

 

平成19年度働きざかり世代の生活習慣実態調査」について 報道発表資料平成20年6月16日福祉保健局

 

l         従業員の定期健康診断の受診率は、大規模事業所は95.0%、中規模事業所は95.4%、小規模事業所は77.0%である。

 

l         定期健康診断の結果を「受け取ったのみ」の者は75.8%、「医師、保健師、看護師等から説明を受けた」者は20.5%である。

 

l         「朝食を食べない」者は24.5%である。

 

l         1週間に1回以上運動している」者は30%、「運動していないが、今後は始めたいと思っている」者が27.4%である。

 

l         メタボリックシンドロームの意味を「知っている」者は59.1%である。定義を正しく理解していた者は25.9%である。


成人男性1/3が肥満で、40-74歳だと半分はメタボ予備軍です!

産業医の気になるニュース

報道発表資料平成20年6月30日福祉保健局 「平成18年東京都民の健康・栄養状況」について

 

 

成人男性は肥満傾向で、40歳から74歳までの半数以上がメタボリックシンドロームが強く疑われる者又は予備群であり、また、全国と比べ遅い時間に夕食を食べる者の割合が多いなどの実態が明らかになりました。

 

l         成人男性の33.7%、女性の17.8%が肥満です。平成17年の男性29.3%、女性15.1%と比較し、増加傾向です。

 

l         40歳から74歳までの男性の53.3%が、メタボリックシンドロームが強く疑われる者又は予備群です。

 

l         成人男性の29.9%、女性の17.4%が夕食時間を午後9時以降に開始しています。全国と比較し、食事時間が遅い傾向です。

 

l         野菜類の平均摂取量は316.8グラムで、平成17年の303.7グラムと比較し、摂取量が増えたものの、目標量の「350グラム以上」に比べて不足しています。中でも、20歳代女性は247.7グラムと少ない傾向でした。

 

l         運動を実行していて、十分習慣化している人は、男性が22.6%、女性が17.4%です。

 


産業医の(安全)衛生委員会への参加

衛生委員会への参加は、産業医にとって「義務」ではありません

 

しかし、企業の企業内産業保健サービスをちゃんとやるにあたっては産業医の参加は不可欠と思えます。

 

 

「産業医の衛生委員会への参加の現状は27.2%」

 

からは、いかに名ばかりの産業医(場合によっては名義貸しの産業医)が多いのかと推測してしまいます。 (あくまで個人的見解です。)

 

 

「産業医の衛生委員会(安全衛生委員会)への参加」を

 

事業所規模別にみると、

 

  1,000人以上の事業所は86.1%、

 

  500~999人の事業所は65.0%、

 

  300~499人の事業所は51.9%、

 

  100~299人の事業所は24.1%、

 

  50~99人の事業所は24.4%に止まっています。

 

 

産業医の常勤・非常勤でみると、

 

産業医を常勤で選任している事業所においてはは、64.4%となっている一方、

 

非常勤で選任している事業所においては、26.4%に止まっています。


産業医の職場巡視

毎月最低1回の職場巡視は、産業医の義務とされています。

 

 

2002年の財団法人産業医学振興財団「産業医活動に関する調査研究報告書」によると、

 

職場巡視の程度が「要請がなくても月に1回以上」である産業医の割合は50.0%であり、

専属産業医は8割を超えた一方、嘱託産業医は4割程度だそうです。

 

 

いわゆる「工場的な作業場」では毎月の職場巡視の必要性は高いと思います。

このことは、容易に理解できます。

 

しかし、はたして都心のオフィスビルで、デスクやPCしかないところで、

 

毎月の職場巡視は意味があるのでしょうか?

 

「工場的な作業場」と同じ視点しかない産業医とっては、

 

答えは、「No!意味がない。時間のムダ!」でしょう。

 

 

このような視点でだけ考えれば、必ずしも毎月の職場巡視でなくてもいいかもしれません。

 

 

床の電気配線が転びやすそうでないか、照明・換気は充分かなどの環境管理、付帯設備や安全・防火管理に問題はないか云々は、担当者にお任せして、その報告をチェックする方法でもいいような気もします。

 

しかし、毎月最低1回の職場巡視は、産業医の義務です。

 

やる必要があります。

 

やらなければ、違反です。

 

やるのならば、そこに何か意義を見出して、前向きな気持ちで職場巡視をしたいものですね。

 

その秘訣については、管理人にお問い合わせ下さい。