産業医も気になるメンタルヘルスへの対策の背景

 

近年、企業内産業保健サービスにおいて重視すべき課題としてメンタルヘルス対策があります。

 

 

2006年の「メンタルヘルスの取り組み」に関する企業アンケートによると、

 

 

  最近3年間における「心の病」は6割以上の企業が「増加傾向」と回答し、過去2回の結果と比較すると、一貫して増加しています。

 

 

心の病が増加傾向と答えた企業は?

 

     2002年:48.9%、2004年:58.2%、2006年:61.5%と増加傾向にあります。

 

 

メンタルヘルスに関する対策に力を入れる企業は?

 

     2002年:33.3%、2004年:46.3%、2006年:59.2%と、メンタルヘルスに関する対策に力を入れる企業も倍近くに増えています。

 

 

 

さらに、メンタルヘルス対策について、約9割の労働組合が必要性を肯定していることを示したものもあります。(2005年、連合「第5回安全衛生に関する調査」)。

 

 

最近のデータでは、2007年度に労働相談情報センターに寄せられたメンタルヘルス(心の健康)に関する相談数は、5946件で、2006年度から105.7%増し、ほぼ倍増となっています。

 

中でも、「職場の嫌がらせ」が2割増加、また、英会話学校等で働く「外国人関連の相談」も2割増加となっています。

 

 

このようなことから、個々の企業、事業場で着実にメンタルヘルス対策が実施されることが求められています。

 

 

また、メンタルヘルス不調の労働者が休業から復帰し、又は継続して働き続けられるようにするといった再チャレンジを支援する仕組みについても早急に構築する必要があります。

 

 

各社がそれぞれの会社に合わせた、「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援プラン」を作成することは、その労働者のみならず会社および人事に関与する人にとって、とても有意義であると思います。

 

 

今後とも、こうした対策の実施状況を踏まえて、より効果のあるメンタルヘルス対策について検討していくことが必要です。

 

 

 

(参考)最近のメンタルヘルスに関する労働行政の取組み

 

19999  「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針について」

 

20008月 「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」

 

20014  「労働時間の適正な把握の為に使用者が講ずべき措置に関する基準」

 

20022  「過重労働による健康障害防止の為の総合対策」

 

200410 「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」

 

20063   「過重労働による健康障害防止のための総合対策について」

 

  

実際のメンタルヘルス対策 「4つのケア」を整えましょう。

 

実際のメンタルヘルス対策として、「4つのケア」を整えましょう。

 

1.       労働者個人によるセルフケア

 

2.       管理監督者による、ラインによるケア

 

3.       事業場産業保健スタッフ等によるケア

 

4.       事業産業保健スタッフ(事業外業者)によるケア

 

 

具体的には、

 

 

1.   労働者個人によるセルフケア

 

         労働者自身が、自ら自らの心の健康のために行う対策です。

 

         その内容は、ストレスへの気づき、ストレスへの対処自発的な相談などです。

 

         実践方法としては、知識の普及や周知のための社内広報(紙・HP)、健康保険組合の雑誌、講習会などがあります。

 

 

2.   管理監督者によるライン(職場)によるケア

 

         日常的に労働者と接する現場の管理監督者が行うケアです。

 

         その内容は、心身の不調をきたしている部下の把握と相談対応、職場復帰支援などです。

 

         メンタルヘルスケアの中で、重要な位置を占めています。

 

 

3.   事業場産業保健スタッフ等によるケア

 

         産業医、衛生管理者、衛生委員会なども含む事業者による、会社としてのケア(への取り組み)です。

 

         その内容は、近い問題に対処可能な具体的な計画、経営方針の一部としての中期的計画・予算化などです。

 

         最も重要なことは、事業者による明確な意思の表明=企業としてのコミットメントです。

 

 

4.   事業産業保健スタッフ(事業外業者)によるケア

 

         事業内で足りない部分に関しては、事業外資源の活用などについても決めておきましょう。

 

         その内容は、EAP機関などのアウトソーシングや場合により医療機関です。

 

         社内で対応できる範囲とアウトソーシングを使う範囲、関係者のプライバシーの問題などの周知が必要です。

 

 

いろいろあって、大変ですが、まずは、必要な時に必要なことができる社内体制を作りましょう。

 

 

あなたの会社の人事部、衛生委員会などで、産業医の先生と相談して下さい。

 

メンタルヘルス対策 会社の守備範囲を知りましょう。

 

メンタルヘルス対策として、いろいろなことが必要なことがわかってきました。

 

 

実際は、一部の大企業を除いて、メンタルヘルスケアの全てを事業場内のスタッフでまかなえる事業場はきわめてわずかです。

 

 

従って、事業場外資源といかによいネットワークを築き、活用できるかということが、メンタルヘルスケアにおいて重要なポイントのひとつです。

 

 

事業場外資源を有効に活用するためには、事業場外資源機関にコンタクトをとる前に3つするべきことがあります。

 

1.       事業場内でどのようなニーズがあり、何が必要なのか明確にすること。

 

2.       事業場外資源の役割や特徴を理解すること。

 

3.       どこまではできて、どこからができないかを知ること。

 

 

あなたの会社の人事部、衛生委員会などで、産業医の先生と相談して下さい。

メンタルヘルス対策 嘱託産業医の有効な利用方法

 

今日は、嘱託産業医の有効な利用方法についてもお話します。

 

 

常勤の産業医がいる会社であれば、常にメンタルストレスをもった従業員が直に相談することも可能ですが、

 

嘱託産業医の多くは普段は会社にいないため、産業保健スタッフや管理監督者が日々の労働者への相談をすることが多いと思います。

 

 

また、嘱託産業医の限られた訪問時間を有効に使う上でも、産業保健スタッフや管理監督者が最初の対応をできると有効です。

 

 

実際の嘱託産業医の役割としては、労働者の健康状態を正確にアセスメントすることが、特に重要です。

 

 

 

従業員のメンタルヘルス相談に関しても、

 

その従業員が専門的な治療がいるか否か、

 

就業場の措置を必要としているか否か、

 

についての判断こそが、産業医の役目です。

 

 

 

産業医は、必要に応じて、外部の医療機関を紹介したり、就業制限を勧告するなどの措置を行います。

 

産業医はその場で治療を行うわけではありません

 

(それを期待している会社は二重のリスクを負うことになります。詳しくは管理人へ・・・)

 

 

 

あなたの会社の産業医とは、メールや電話で気軽に相談できる体制になっていますか?

 

ご確認下さい。

実際のメンタルヘルス対策 メンタルヘルスケアの活動目的(予防の3段階)

 

一般に疾患の予防には3段階あります。

 

それを職場のメンタルヘルス対策にあてはめて考えたいと思います。

 

              

1次予防

 

         メンタルヘルス不全(者)の未然防止です。

 

         個人によるアプローチとして、セルフケア、

 

         環境的アプローチとして、ストレス原因の除外と改善があります。

 

 

2次予防

 

         メンタルヘルス不全(者)の早期発見と早期対処です。

 

         事業場における事故や問題の発生を防ぎ、企業の戦力ダウンも防止します。

 

         現在、企業で多く行われていることの多くは、この2次予防だと考えられます

 

         企業のリスクマネジメント、コンプライアンスとして、面談の機会を増やしているのが一般的です。

 

 

 3次予防

 

         実際のメンタルヘルス不全者の治療と円滑な職場復帰のための支援です。

 

         産業医の訪問時間の多くを割く必要がでてくる場合もあります。

 

         企業のリスク管理として、とても重要なポイントです。

 

実際のメンタルヘルス対策 管理監督者による職場メンタルヘルスケアのポイント

 

日常的に労働者と最も接するのは、現場の管理監督者(≒多くは上司)です。

 

 

日常業務の中で、部下の心身の不調に気づき把握することが、メンタルヘルスケアの中で重要な位置を占めています。

 

 

では実際に、何に注目すれば、気づくことができるのでしょうか?

 

 

ポイントは、「ズレ」です。

 

 

「職場の平均的な姿からのズレ」

 

「本人の通常の行動様式からのズレ」

 

いつもと違う様子」という感覚です。

 

 

具体的には、

 

最近遅刻が多い、仕事の能率が低下した、ミスが目立つ、顔色がよくない、服装が乱れてきた・・・などです。

 

 

このような時は、本人から話を聞いた上で産業保健スタッフに相談するようにすすめたり、本人が相談に行きたがらない場合には、管理監督者自らが産業保健スタッフに相談することが大切です。

 

 

面談に当たっては、最近遅刻が多い、仕事の能率が低下した、ミスが目立つ、顔色がよくない、服装が乱れてきた・・・などを指摘するのではなく、

 

「最近様子が以前と違うので、心配している。」

 

という気持ちを伝えることから始めましょう。

 

 

アドバイスをするよりも、まずは部下の気持ちを十分に聴くことが大切です。

 

そして、必要に応じて産業保健スタッフや産業医へ相談を促しましょう

産業医と最近の脳・心臓疾患及び精神障害等の労災補償状況について

 

最近の脳・心臓疾患及び精神障害等の労災補償状況について

 

2001年を100%とすると、脳・心臓疾患及び精神障害等の労災補償状況は、請求件数(左図)、実際の認定件数(右図)ともに増加しています。

 

最近の労災件数 図

 

 

 

 

 

特に、精神疾患(メンタルヘルス関係)での増加が著明です。

 

 

 

 

脳・心臓疾患及び精神障害等の労災補償状況の内わけについて

  

実際の労災補償としては、生活習慣病に関するものが、メンタルヘルス等の精神障害関連のものの倍以上あります。

 

 

 

気になる労災caseとしては、

 

発症から5年後の請求で、時効後に労災が認定されたcaseもあるということ。

 

退職後の自殺を労災として認定したcaseもあるということ。

 

 

最近のニュースとしては、

 

トヨタ従業員の自殺が過労死として認定された判決。通常業務後の「サークル活動」が労働時間か否かが焦点になりました。

 

 マクドナルド店長の残業時間の判決。管理職、裁量労働制、サービス残業についてが焦点になりました。

 

産業医と近年の労災情報 ~労災件数について~

 

ここでは、産業医の関係する企業のリスクマネジメントとして、労災、過労死、過重労働対策についてお話します。

 

 

最近の労働行政の取組みは厳しくなってきています。

 

下記法律から、最近の監督署の取締り強化・是正勧告急増の背景が見えてきませんか?

 

 

 199610

   「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」を策定

 

 19999

   「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針について」

 

 20014

   「労働時間の適正な把握の為に使用者が講ずべき措置に関する基準」

 

 200112 

   「脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準」

 

 20022

    「過重労働による健康障害防止の為の総合対策」

 

 20035

   「賃金不払い残業総合対策要領」「サービス残業解消対策指針」

 

 20063

    「過重労働による健康障害防止のための総合対策について」

産業医と過労自殺、脳・心疾患の労災認定

産業医の気になるニュースです。2008年5月の発表をまとめます。

過労自殺81人(前年度比22.7%増)で過去最多、2年間で倍増。

「脳、心疾患」の認定者392人も前年度比約10%増え過去最多。

 

仕事上のストレスが原因でうつ病などの精神疾患になり2007年度に労災認定を受けた人が268人(前年度比30.7%増加)と前年に続き過去最多を更新したことが厚生労働省のまとめで分かった。過労自殺(未遂を含む)も81人(前年度比22.7%増)で過去最多となり、2年間で倍増した。

 

同省によると、07年度にうつ病などの精神疾患で労災請求した人は前年度比162%増の952人、認定は同307%増の268人で、ともに4年前の2倍以上となり、過去最多だった。過労によるうつ病の労災請求件数は03年度の約2倍の952人(前年度比16.2%増)に増えた。

 

業種別では製造業(59人)がトップで、卸売・小売業(41人)や建設業(33人)、医療福祉業(26人)などが目立った。職種は▽専門・技術職75人▽生産工程・労務作業者60人▽事務職53人――。製造関連が前年度比で2倍近く増加しており、好気を反映し生産現場での過重労働の広がりがあるとみられる。

 

268人のうち自殺(未遂含む)で労災認定を受けた人は81人(未遂3人)。4022人、3021人で、働き盛りの年代が過半数を占めた。

 

過労自殺と認定された81人のうち80人は男性で、年代別では40代が22人、30代が21人、50代19人、20代15人。うつ病など精神疾患全体の認定は30代100人、20代66人、40代61人、50代31人。20、30代で6割を超え若年労働者に心の病が広がる状況を示した。

 

同省は今回、精神疾患で労災認定された人の時間外労働時間を初めて調査。81人のうち、1カ月の平均は100時間以上120時間未満が20人、80100時間が11人などだったが、40時間未満も12人おり、労働時間が比較的短くても過労自殺の危険があることが裏付けられた。

 

 

脳出血や心筋梗塞(こうそく)などを発症した「脳、心疾患」の認定者392人(うち死亡142人)も前年度比約10%増え過去最多。請求件数は931人で前年度比0.7%減少した。残業時間は月80~100時間未満が135人、100~120時間未満が91人。160時間以上も35人に上った。

 

産業医も恐れる労働基準監督署の罰則

 

いきなりですが、

 

社員が労働基準監督署に駆け込む=労働基準監督署の調査になると思って下さい。

 

 

その場合、労働基準監督署はいきなりきます。

 

 

 

そして、労働基準監督署の罰則には3種類あります。

 

 

改善指導票(指摘)

 

監督官が事業所調査・立入検査において、労働法令違反には該当しない改善した方が良い、と指摘するものです。

 

または、後々労働法令違反につながる可能性が有る事項に交付されます。

 

 

是正勧告書(イエローカード)

 

事業所調査・立入検査において、労働法令違反に該当している事項に対する行政指導です。

 

行政処分ではありませんので、是正勧告に従わないことだけで行政刑罰や取締りは出来ませんが、

 

その違反状態を放置すると、その労働法令違反を理由に処罰又は送検される可能性があります。

 

 

命令書(レッドカード)

 

施設や設備に安全対策上の不備が有り、労働者に急迫した危険が有る、と認められる場合に交付される「使用停止等命令書」などを指します。

 

これは、労働基準法や労働安全衛生法などの監督権行使規定に基づき交付されるもので、その命令に従わないことのみで処罰されます。

 

 

 

 

実際の処罰は、事業主に対して50万円以下の罰金と意外と(?)割安です。

 

だからといって、放置すると、企業の社会的信用の損失となります。

 

 

また、実際に民事訴訟があったときに不利になることは言うまでもなく、

 

結果として、(賠償費用等で)高くつくことが多いです。